2012年3月23日金曜日

二重生活の拠点をバリへ

現在一時帰国していて、今回の「バリ日記」は日本の方にインタビューをさせていただきました。
3月15日、埼玉県川口市在住の菅野沙織さんにお目にかかりました。
沙織さんは現在、日本とバリとの二重生活を計画中です。
昨年3月19日から1週間、パッケージ旅行で家族とはじめてのバリへ。
予約をしたのは3月16日頃。出発までは2、3日の急なスケジュールでした。


1 たまたまの予定が偶然の道筋に

もともと3月に家族でどこか海外へという予定でした。
震災が起きたことから両親は行くことができず、会社員のご主人は忙しい最中にも有給休暇を取ることが予定されていた事から同行ができ、4歳の女の子と1歳の男の子との4人での旅になりました。
ご両親は福島県二本松お住まいで、福島第一原発からは55キロほどしか離れておらず成田までの移動が不可能だったことから断念されてしまったのです。
「二本松は幸い津波の影響はなかったんです。でも、ガソリンが買えず、道路も封鎖されていました。当時は分からなかったけれど、放射線風向きマップで赤い部分(線量が最も高い地域)に入っていた区域でもありました」
沙織さんは、事故当時は放射線の影響についてはあまり大きく気にしていたわけではなかったようです。テレビ報道で放射能汚染については「人体にただちに影響はない」と言われていた頃でしたから、それが一般的だったと思われます。

 

沙織さんは自営でオーガニックハーブを原料とする自然派化粧品の開発と商品化をしています。化粧品のブランドを立ち上げたい個人やメーカーのサポートを全面的にお手伝いする仕事で、原料を厳選して化粧品そのものをつくることから、パッケージ、WEBサイトを立ち上げることまでのコンサルを一括して請け負う仕事。現在はお医者さんがつくろうとしているプロダクトに携わっていおり、これまでもナチュラルハウスのオリジナル化粧品など、自然派のなかでも一般に知られている有数のブランディングを手掛けています。

 
3月にバリというディスティネーションを選んだのは、 化粧品の原料を開拓するに当たっての期待をしていたから。

 

これまでもアーユルヴェーダのあるインドや、粘土、オリーブを原料とするトラディショナルなスキンケアがあるモロッコなどに出かけたことがありました。次の旅行は家族で行くという予定だったので 、事故のある前から何となく下調べはしていたのです。バリは、放射能汚染からの避難というよりも仕事のきっかけづくりを考えての選択だったようです。

 
「1週間足らずの旅ではほとんど仕事にはならなかったのですが、バリでソープナッツと呼ばれている興味深い原料のことを知ったり、それなりに情報を得ることはできました。あっという間ではありましたが、今となってはあの時に訪れた事がきっかけでバリとの二重生活を目指すようになったかも」

 
ソープナッツというのは、天然の木の実ながらそれをそのまま洗濯に使えるというもの。バリではエコロジカルな生活を好む外国人の間で知られた存在です。

 
「昨年3月に国外へ出たのはある意味偶然だったわけですが、ずっと後から思い出したのですが、 その少し前からなぜか3月には国外へ出たいという気がすごくしていて。それは仕事のリサーチということより、その頃に日本にいない自分のイメージみたいなものがあったからでした」

 
「結果的に子供たちをその時期に国外へ連れ出すことができた。偶然ではあったけれど、今となっては不思議な偶然だったんです」

 
何か、導かれたような、ということだったのでしょうか。

 
ともかく幸運な選択でした。


 
2  子供の変化に気づいた2度目の旅
再びバリへ向かったのは、昨年7月。
この時はご主人は同行されず、友人母子と。2ヶ月くらい行きたかったけれど、諸事情から1ヶ月に切り詰めての滞在に。

知り合いから聞いたクロボカンにある日本人経営のゲストハウスに滞在。マクロビオティックの専門家でもあるオーナーから時々料理をしてもらったり、1ヶ月の宿泊費は7万円ほどと決して安くはなかったけれど参考になることがたくさんあったそう。

お子さんたちは1週間ほどの間UBUDエリアに出来たばかりの「スターシード」という保育施設に通いましたが、オーストラリア人が経営するシュタイナー教育取り入れた伸び伸びとした保育にとても好感が持てたようです。
「とても良くしていただいて、言語は英語だけでしたけれど貴重な経験になりました。他にも、デンパサール近郊にあるイスラム系小学校を見学しました。こちらは日本語を話せる先生がいて教科に日本語があるとのことでちょっと心強い気がしました」

バリとの二重生活ができたらと思いはじめたのは、仕事の面だけではありませんでした。

3月頃から何となく下のお子さんが下痢気味だったのが、この7月の旅でバリについた途端ピタッと止まってとてもよく食べるように。

 
「バリの水をそのまま舐めたり、土いじりをしたり。来てからもっと下痢になるんじゃないかと思ったのですが、日本では何となく調子が優れなかった子供がすっかり食欲旺盛で元気一杯になる姿を見て、これは、と思いました。目に見えない放射能。野呂美加さんも言っていましたが、30日間くらいでも子供達にとっては保養をさせる事がいかに大切なのかに気づかされました。あんなにあからさまに変わるとは、さすがに驚かされました」
放射能の影響は、本当にただちに健康に影響はないといえるのかどうか。

 
母子たちが1ヶ月滞在した7月、 沙織さんと友人は全身に及ぶようなじんましんに。子供たちも現地の人は比較的刺されずにいる蚊にかなり刺されていて不安も感じたそうです。でも、じんましんのような中から出てくる皮膚症状はバリへ来たばかりの人には時々起きること。日本で気づかないうちに溜まっていたものが解毒作用のように外側へ出てくるものではないかとも考えられます。蚊に刺されやすいことは、バリの風土に慣れてくると比較的落ち着くような印象も。私も住み始めた頃は蚊取り線香を焚きまくりましたが、今は時々思い出したように刺されるけれどローカルの精油を塗ればあっという間に痒みは引きます。 体質が変化してくるまでの一時の辛抱ではないかと思っています。

 
「今後の事を考えると、主人の仕事から一家揃っての移住までは叶わないけれど、母子だけでの二重生活という手段ならできるのではないかと。今年6月頃にまたバリへ行く予定にしているのですが、こうした短期的な行き来の中で1年以内には子供達の学校についても二重生活に相応しい選択肢を決めて行きたいです」

 
「でも、バリは物価も安くないですね。保育所は1ヶ月で3万円くらいと日本並みだし、ある程度経済力のある人じゃないと難しい気もします。それほどお金かけてまで保養しに行きたいかどうかと問えば、殆ど人が実現できないかも、と」

 
沙織さんが今理想としているのは、一時的に短期間でバリで保養したい母子に、比較的安価で滞在できるような情報源が提供されること。

 
一度もバリへ来た事がない人にとっては一時的に使える住居の状況や相場、一体どんな保育施設があってどの程度の費用なのか、お米はどこで買うのがいいか、などなどの生活情報がネット上で配信され、実際にバリで手助けをする人たちがいること。
バリで宿泊施設を経営する日本人が、放射能汚染からの一時的な非難母子をこの先何年も継続して考え配慮に取り組んでくれないかどうか。 これは、外国旅行にあまり馴染みのない人にとってはかなり心強いサポートになるはず。バリに在住する「何か力になりたい」と思っている我々日本人に工夫が求められる課題かと思います。 実際に一家で移住までは遠い道のりと感じている多くの人にも、短期的な保養ならかなり現実味がある方法になるとすれば、もっと多くの人たちに身近な“バリへの避難”になりそうです。

3 放射能以外のストレス気づいて

 
沙織さんは、1回目のバリ滞在にあとに実は和歌山県へ一時的に滞在したと言います。国外への避難は大変だから、国内という方法はどうなのかと実践してみたのです。
「そこで気づいたのは、放射能からの避難ということだけが問題じゃないということでした。放射能は目に見えないし、実際に病気になるかどうか今の時点では分からない。でも、それ以上にストレスになっている事があると気づきました。それは、無関心というか、皆が起きた事故について蓋をしているような空気感。国内での避難はそのストレスからは開放されないんです。海外へ行かなきゃダメなんだと」
実際、幼稚園での給食をためらってお弁当持参希望するような人は100人に一人いるかどうか、という印象だとか。
「私は前から日本にある特有の空気感について違和感を持っていたからかもしれません。これは子供達への放射能汚染問題とは別に自分の中ではっきり認識したこと。今はバリへの往復がいいのだろうと思い至りました」

 
震災から1年。

 
これまでかなり気をつけてきた人も、時間が経つにつれ次第に緊張感が薄れつつあります。 周りの空気感から判断して「もう大丈夫」と思うかどうか。

これは人それぞれなってくる思いますが、事実上何かが収束したという事は少なくともまだありません。空気感に流されないためにも、国外という選択は意味があるのではないでしょうか。

7月に滞在したゲストハウス
http://m.facebook.com/pages/Desa-Biasa/126016100801787?id=126016100801787&refsrc=http%3A%2F%2Fwww.google.co.jp%2Fsearch&_rdr
上記のFacebookページに住所があります。
Desa Biasaというゲストハウスで夫人が日本人で日本で20年間マクロビオティックの
レストランをされていた方です。
料金は1泊だと5000円(朝食つき)、一ヶ月だと7万円(自炊)です。


●1週間だけお子さんが通われたスターシードという保育施設の
所在地、1週間の料金、連絡先
UBUDにある保育施設
上記ページの中ほどにスタートシードの情報があります。
正規に通うと週3〜5日で1ヶ月3万〜5万です。